働き方の多様化やテクノロジーの進化に伴い、eラーニングは企業における人材育成の重要な手段となっています。時間や場所にとらわれず、効率的に学習機会を提供できるeラーニングは、従業員のスキルアップや知識習得に大きく貢献します。
しかし、「eラーニング」と聞くと、なんだか難しそう、専門的な知識が必要なのでは?と感じる方も少なくないでしょう。
特別なプログラミングスキルや専門的な知識がなくても、比較的簡単にeラーニング教材を自作できるツールや方法が存在します。この記事では、eラーニング自作の基本的な考え方から、具体的な手順、そして成功させるためのポイントまでを、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。
なぜ今、eラーニング自作が注目されているのか?
まず、なぜ今eラーニングの自作が多くの企業で注目されているのでしょうか?その背景には、以下のような理由が挙げられます。
- コスト削減: 外部のeラーニングサービスや研修会社に依頼する場合と比較して、教材作成にかかるコストを大幅に削減できます。特に、内製化できる部分を増やすことで、長期的なコストメリットが期待できます。
- 柔軟性とカスタマイズ性: 自社のニーズや課題に合わせて、教材の内容、構成、デザインを自由にカスタマイズできます。既存の研修資料を流用したり、独自のノウハウを盛り込んだりすることも容易です。
- 迅速な対応: 社内の状況変化や新たな課題が発生した場合でも、迅速に教材を修正・更新し、タイムリーな情報提供が可能です。外部に依頼する手間や時間を省けます。
- ノウハウの蓄積: 教材作成を通じて、社内に教育コンテンツ作成のノウハウが蓄積されます。これにより、継続的な人材育成体制の強化につながります。
- 学習効果の向上: 受講者の進捗状況や理解度に合わせて、教材の難易度を調整したり、補足資料を提供したりするなど、きめ細やかな対応が可能です。これにより、学習効果の最大化が期待できます。
eラーニング自作の前に知っておきたい基本
eラーニング教材を自作する前に、いくつか基本的なことを理解しておきましょう。
1. eラーニング教材の種類
eラーニング教材には、主に以下のような種類があります。
- テキスト形式: PDFやWordなどの文書形式で提供される教材。手軽に作成できる反面、視覚的な訴求力は低い場合があります。
- 動画形式: 講義や操作説明などを動画で提供する教材。視覚的に理解しやすく、臨場感がありますが、制作に手間がかかる場合があります。
- 音声形式: ラジオ番組のように音声のみで提供する教材。移動中や作業中など、ながら学習に適しています。
- スライド形式: PowerPointなどのプレゼンテーションソフトで作成した資料を共有する形式。視覚的にわかりやすく、補足資料などを追加しやすいです。
- インタラクティブ形式: クリック操作やクイズ、シミュレーションなどを組み込んだ教材。学習者の能動的な参加を促し、理解度を高めます。
2. LMS(学習管理システム)とは
LMS(Learning Management System)は、eラーニング教材の配信、受講者の管理、進捗状況の把握、成績評価などを行うためのシステムです。eラーニングを本格的に運用する場合、LMSの導入は非常に有効です。
LMSには、クラウド型やオンプレミス型、無料のものから有料のものまで様々な種類があります。自社の規模や予算、必要な機能に合わせて選択することが重要です。
3. オーサリングツールとは
オーサリングツールは、eラーニング教材を作成するためのソフトウェアです。テキスト、画像、動画、音声、クイズなど、様々な要素を組み合わせて教材を作成できます。
オーサリングツールにも、高機能な有料のものから、比較的簡単に使える無料のものまで様々な種類があります。PowerPointなどの既存のツールを活用できる場合もあります。
eラーニング教材自作のステップ:初心者向け基本手順
それでは、実際にeラーニング教材を自作する基本的な手順を見ていきましょう。ここでは、最もシンプルなケースとして、PowerPointなどの既存のツールを活用して教材を作成し、社内ネットワークなどで共有することを想定して解説します。
ステップ1:学習目標と対象者を明確にする
まず最初に、eラーニングで何を達成したいのか、誰に何を学んでほしいのかを明確にします。
- 学習目標: 受講者が教材を通して何を理解し、どのようなスキルを習得することを目指すのかを具体的に設定します。(例:「新入社員が会社の基本理念を理解し、説明できるようになる」「営業担当者が新製品の特性と競合製品との違いを説明できるようになる」など)
- 対象者: 誰に向けての教材なのかを明確にします。対象者の知識レベル、経験、学習スタイルなどを考慮することで、より効果的な教材を作成できます。(例:「新入社員」「中堅社員」「管理職」など)
ステップ2:教材の構成と内容を設計する
学習目標と対象者を明確にしたら、教材全体の構成と具体的な内容を設計します。
- 教材の構成: どのような流れで学習を進めていくのか、章立てやモジュールの構成を考えます。論理的でわかりやすい構成を心がけましょう。(例:「導入→基本知識→応用→確認テスト」など)
- 教材の内容: 各章やモジュールで何を教えるのか、具体的な内容を検討します。箇条書きや図解などを活用し、視覚的に理解しやすいように工夫しましょう。既存の資料や研修内容を参考にしながら、必要な情報を整理していきます。
- 教材の種類: どのような形式の教材が効果的かを検討します。テキスト、動画、音声、スライド、インタラクティブコンテンツなどを適切に組み合わせることで、学習効果を高めることができます。
ステップ3:教材を作成する
設計に基づいて、実際に教材を作成していきます。
- テキスト教材: WordやPowerPointなどの文書作成ソフトを活用して作成します。見出しや箇条書きを効果的に使い、重要なポイントを強調しましょう。図やイラストを適度に挿入することも有効です。
- 動画教材: スマートフォンやWebカメラなどで撮影した動画を編集ソフトで加工します。テロップやアニメーション、BGMなどを加えることで、より魅力的な動画にすることができます。無料の動画編集ソフトも多数存在します。
- スライド教材: PowerPointなどのプレゼンテーションソフトで作成します。アニメーションやトランジションを効果的に使用し、飽きさせない工夫をしましょう。音声解説を加えることも有効です。
- インタラクティブ教材: PowerPointのアドイン機能や、無料のオーサリングツールなどを活用することで、簡単なクイズやアンケートなどを組み込むことができます。
ステップ4:教材を共有・配信する
作成した教材を受講者に共有・配信する方法を検討します。
- 社内ネットワーク: 社内サーバーや共有フォルダに教材をアップロードし、受講者にアクセス権を付与する方法です。手軽に始められますが、受講者の進捗管理や成績評価は難しい場合があります。
- クラウドストレージ: Google DriveやDropboxなどのクラウドストレージサービスを利用して教材を共有する方法です。場所を選ばずにアクセスできますが、セキュリティ対策には注意が必要です。
- LMS(学習管理システム): LMSを導入することで、教材の配信、受講者の管理、進捗状況の把握、成績評価などを一元的に行うことができます。本格的なeラーニング運用にはLMSの導入がおすすめです。
ステップ5:効果測定と改善
教材を公開したら、受講者の反応や学習効果を測定し、必要に応じて改善を行います。
- アンケート: 受講者に対してアンケートを実施し、教材の内容や形式、使いやすさなどについて意見を収集します。
- 進捗状況の確認: LMSを導入している場合は、受講者の進捗状況やテストの結果などを確認し、理解度を把握します。
- アクセスログの分析: 教材へのアクセス状況などを分析し、どのコンテンツがよく見られているか、どこで離脱が多いかなどを把握します。
これらの情報を基に、教材の内容や構成、配信方法などを改善していくことで、eラーニングの効果を最大限に高めることができます。
初心者でも安心!eラーニング自作に役立つ無料ツール
「やっぱり、専用のツールがないと難しいのでは…?」
そう思われた方もいるかもしれません。しかし、実は無料で利用できる便利なツールもたくさんあります。ここでは、初心者の方でも比較的簡単に使えるツールをいくつかご紹介します。
- PowerPoint: 多くの企業で導入済みのプレゼンテーションソフトですが、動画の挿入や録画、簡単なアニメーション作成など、eラーニング教材作成に活用できる機能が豊富に搭載されています。
- Google Workspace (Google Slides, Google Forms): Googleが提供する無料のオフィススイートです。Google Slidesでスライド教材を作成したり、Google Formsで簡単なテストやアンケートを作成したりすることができます。クラウド上で共同作業も可能です。
- YouTube: 作成した動画教材を無料で公開・共有できます。限定公開設定にすれば、特定のユーザーのみに公開することも可能です。
- Screenity (Chrome拡張機能): Webブラウザ上の操作画面を録画したり、注釈を加えたりできる無料のChrome拡張機能です。ソフトウェアの操作説明などの動画教材作成に便利です。
これらの無料ツールを組み合わせるだけでも、十分にeラーニング教材を自作することができます。まずは身近なツールから試してみてはいかがでしょうか。
eラーニング自作を成功させるための5つのポイント
最後に、eラーニング自作を成功させるための重要なポイントを5つご紹介します。
- 受講者の視点を常に意識する: 教材を作成する際は、常に受講者の立場に立って考えましょう。どのような情報がわかりやすいか、どのような構成が学習しやすいか、飽きさせないためにはどうすればよいかなどを意識することが重要です。
- 一方的な情報提供にならないように工夫する: ただ情報を羅列するだけでなく、図やイラスト、動画などを活用して視覚的に訴求したり、クイズや演習問題を取り入れてインタラクティブな要素を取り入れたりするなど、受講者の能動的な参加を促す工夫をしましょう。
- 無理のない範囲で始める: 最初から完璧な教材を目指す必要はありません。まずは簡単な教材からスタートし、徐々にステップアップしていくことが大切です。無料ツールなどを活用して、できる範囲から始めてみましょう。
- 社内外の成功事例を参考にする: 他の企業や個人のeラーニング教材を参考に、良い点を取り入れてみましょう。インターネット上には、様々なeラーニング教材の事例や作成ノウハウが公開されています。
- 積極的にフィードバックを収集し、改善を続ける: 教材を公開した後も、受講者からのフィードバックを積極的に収集し、改善を続けていくことが重要です。アンケートや意見交換会などを通じて、改善点を見つけ出し、より効果的な教材へと進化させていきましょう。
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まとめ
eラーニングの自作は、決して難しいものではありません。基本的な知識と手順を理解し、適切なツールを活用すれば、初心者の方でも十分に質の高い教材を作成することができます。
この記事を参考に、まずはできることから一歩踏み出してみてください。自社に合ったeラーニングを内製化することで、コスト削減、柔軟なカスタマイズ、迅速な対応、ノウハウの蓄積、そして何よりも学習効果の向上を実現できるはずです。