最終更新日:2025年3月7日
2025年、日本の労働市場は大きな転換期を迎えています。AI技術の進化やデジタル化の加速により、多くの職種で求められるスキルが急速に変化しています。このような環境下で、個人のキャリアアップや企業の競争力強化のために「リスキリング」が注目を集めています。
リスキリングとは、既存の技能や知識を更新し、新たなスキルを習得することで、変化する労働市場に適応する取り組みです。政府は2022年10月に個人のリスキリング支援に5年で1兆円を投じると表明しました。この政策に基づき、様々な補助金・助成金制度が整備されてきました。
この記事では、2025年3月現在のリスキリング補助金制度について、個人向け・企業向けの両面から解説します。
個人向けリスキリング補助金制度
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
経済産業省が実施する「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、個人のキャリアアップを強力にサポートする制度です。
補助金の概要
- 上限額:56万円
- 対象:キャリアアップを目指す個人
申請の流れ
- 「補助事業者を探す」ページから、補助事業者を選定
- キャリア相談の実施
- リスキリング講座の受講
- 転職活動の実施
補助事業者の例
- SAMURAI ENGINEER:プログラミング、AI、Webデザイン等
- マケキャン by DMM.com:Webマーケティング
- LINEヤフーテックアカデミー:プログラミング
この制度の特徴は、単なる講座受講への補助だけでなく、キャリア相談から転職支援まで一貫したサポートを受けられる点です。
教育訓練給付金制度
厚生労働省が運営する「教育訓練給付金制度」も、個人のリスキリングを支援する重要な制度の一つです。
制度の概要
- 一般教育訓練給付金:受講費用の20%(上限10万円)
- 専門実践教育訓練給付金:受講費用の50%(年間上限40万円)
この制度は、雇用保険の被保険者または被保険者であった方が対象となります。専門実践教育訓練給付金は、より高度な職業能力を身につけるための長期の教育訓練を対象としており、ITスキルやビジネススキルの習得に活用できます。
企業向けリスキリング補助金・助成金制度
1.人材開発支援助成金
厚生労働省が提供する「人材開発支援助成金」は、企業の従業員教育を支援する制度です。
助成金の概要
- 賃金助成:1人1時間あたり760円(中小企業以外は380円)
- 経費助成:対象経費の一部
この助成金は、企業が従業員に対して行う職業訓練の経費と訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。2025年現在、特に「事業展開等リスキリング支援コース」が注目されています。
※記載金額は「人材開発支援助成金」の内容です。コースにより詳細が異なりますので、詳しくは厚生労働省のページをご覧ください。
申請の流れ
- 訓練開始1ヶ月前までに必要書類を労働局に提出
- 訓練の実施
- 訓練終了後2ヶ月以内に必要書類を提出
- 審査後、助成金支給
2. 特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は厚生労働省によるもので、特定の求職者を雇い入れ、その後のキャリアアップを支援する企業を対象としています。
助成金の概要
- 対象:特定求職者(高年齢者、障害者など)を雇用し、キャリアアップを支援する企業
- 助成額:対象労働者の賃金の一部
この制度は、多様な人材の活用とリスキリングを同時に推進することを目的としています。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(企業向け)
経済産業省が実施するこの事業は、企業が従業員のリスキリングを支援する際に活用できます。
補助金の概要
- リスキリング講座提供・修了:受講費用の1/3(上限40万円)
- 受講者の転職成功・1年継続:追加で講座受講費用の1/5(上限16万円)
この制度は、企業が従業員のリスキリングを支援し、さらにその従業員の転職までサポートした場合に補助金が得られる点が特徴です。
地方自治体のリスキリング支援制度
各地方自治体も、独自のリスキリング支援制度を展開しています。以下に代表的な例を紹介します。
東京都:DXリスキリング助成金
- 対象:都内の中小企業・個人事業主
- 助成額:対象経費の2/3(上限64万円/年)
- 特徴:DX関連の職業訓練に特化
石川県金沢市:大学連携リスキリング促進助成金
- 特徴:地元大学と連携したリスキリングプログラムを支援
岐阜県:ものづくりDX人材育成リスキリング事業
- 特徴:製造業のDX人材育成に特化したプログラムを提供
これらの地方自治体の制度は、各地域の特性や産業構造に合わせたリスキリング支援を行っている点が特徴です。
リスキリング補助金制度の活用ポイント
個人向け
- キャリアゴールの明確化:補助金を申請する前に、自身のキャリアゴールを明確にしましょう。これにより、最適なリスキリングプログラムを選択できます。
- 複数の制度の組み合わせ:「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」と「教育訓練給付金制度」など、複数の制度を組み合わせて活用することで、より大きな支援を受けられる可能性があります。
- 長期的視点での計画:リスキリングは一時的なものではなく、継続的に行うべきものです。補助金を活用しながら、長期的なスキルアップ計画を立てましょう。
企業向け
- 戦略的な人材育成:補助金制度を単なる費用削減の手段としてではなく、企業の成長戦略に沿った人材育成の機会として活用しましょう。
- 従業員のモチベーション向上:リスキリング支援は、従業員のスキルアップだけでなく、モチベーション向上にもつながります。補助金を活用して積極的に支援することで、従業員の定着率向上も期待できます。
- 地域特性の活用:地方自治体の制度は、その地域の特性に合わせた支援を受けられる可能性が高いです。企業の所在地や事業内容に合わせて、最適な制度を選択しましょう。
まとめ
2025年現在、リスキリングは個人のキャリア発展と企業の競争力強化の両面で重要性を増しています。政府や自治体が提供する様々な補助金・助成金制度は、このリスキリングを強力にサポートするものです。
個人の方は、自身のキャリアゴールを見据えて最適な制度を選択し、積極的にスキルアップに取り組むことが重要です。企業の方は、これらの制度を戦略的に活用し、従業員の成長と企業の発展を同時に実現することが求められます。