市場調査とは何か、どのように行うのか
この記事はAhrefs公式ブログの日本語訳です。
原文:Market Research: What It Is and How to Do It
(Mateusz Makosiewicz / 原文の最終更新日: June 3, 2021)
※フルスピード註:この記事は2021年6月3日時点の記載をもとに翻訳しています。Ahrefs公式ブログの記事は今後追記・再公開されることがありますことをご了承ください。
フルスピードによるこの記事の要約:
- 市場調査の役割と重要性
- 市場調査の種類
- 市場調査の方法と利点
- 市場調査で役立つツール
市場調査とは、特定の市場に関する情報を収集、分析し、解釈するプロセスです。過去、現在、(将来の)潜在的な顧客に関する地理的、人口統計学的、心理学的データや、競合他社の分析を考慮して、製品提供の実行可能性を評価します。
言い換えれば、自社のビジネスがターゲットとしている人を理解し、マーケティング戦略をより適切に配置するためのプロセスです。
フルスピード註:市場調査は、マーケティングリサーチとも呼ばれます。(以降この記事では市場調査と表記します。)
マーケティング戦略における市場調査の役割とは?
マーケティング戦略とは、消費者にリーチして(自身の)顧客にするための全体的なビジネスゲームプランのことです。
マーケティング戦略におけるキーワードは「ゲームプラン」です。製品を携えて市場に参入することは、新しいゲームを始めるようなものです。このとき、あなたにとっては初めてのゲームであるため、ルールもわからないし、誰と対戦するのかもわからない状態です。
そこで登場するのが、市場調査です。市場調査でターゲット層を理解することで、マーケティングゲームのルールを知ることができます。また、競合他社の強みと弱みを把握することで、誰が相手なのかを理解できます。
市場調査は、マーケティングのプロが戦略を練り、競合他社を凌駕するために行うものです。また、マーケティングのプロは、自身のマーケティング戦略の強みと弱みを見極めるためにも調査を行います。
ですが、市場調査は究極的なビジネスの神託なのでしょうか? 残念ながらそうではありません。市場調査を専門とする企業でさえ、それを認めています – 以下は、ある企業からの引用です。
(中略)市場調査が正確な科学であると仮定はできません。市場調査ャー が新しいコンセプトに対し、正確な需要を予測することを期待するのは非現実的で不合理なことであり、市場調査ャーの権限外で需要に影響を与える変数が数多くあるからです。
だからこそ、意義のある市場調査はマーケティングの一部であり、実験でもあるのです。実験をするかしないか、そしていつ終わらせるかは、あなた次第です。
例えば、クリスタルペプシは、市場調査の段階では非常に有望と思われましたが、市場に出したら失敗しました(ニュー・コークも同様です)。また、ゼロックス社の業務用コピー機のアイデアは、リサーチアナリストの目にはダメなものと映りましたが、ゼロックス社はそれを実行し、その後は言うまでもありません。
※フルスピード註:クリスタルペプシとニュー・コークのエピソードは、市場調査では売れると判断したものの実際には売れなかったこと、ゼロックス社のエピソードは、市場調査では売れないと判断したのに実際は売れたことを指しています。
どのようなタイミングで市場調査を行うべきか?
ポール・N・ヘイグとピーター・ジャクソンは、著書「Do Your Own Market Research」の中で、市場調査が本当に役立つ、3つの具体的な状況を指摘しています。
- 目標の設定。市場の大きさや潜在顧客の定義などを知ることは、販売目標を立てるのに役立ちます。
- 問題の解決。売上が低いのか、収益性が低いのか。問題が製品の品質低下など内部的なものなのか、競争の激化など外部的なものなのかを理解するのに役立ちます。
- 企業の成長を支える。消費者がどうして、そしてなぜ製品を決定するのかを理解することは、市場に投入する製品を決定するのに役立ちます。
「いつ」に対するもう一つの答えは、決断の重要性です。取り組むべきマーケティング課題が重要であればあるほど、市場調査は重宝します。
例えば、新車を市場に投入することは、かなり大きなイベントですよね?だから、フォードもちゃんとリサーチをしていれば、フォード・エドセルで3億5000万ドルの損失を出さずに済んだかもしれません。つまり、適切な手法を用いれば、消費者がこの車を高くて醜い車と判断することを予測するのは、それほど難しいことではないはずです。
とはいえ、市場調査は必ずしも大規模で複雑なプロジェクトである必要はありません。比較的新しいトレンドであるアジャイル・市場調査では、定期的かつコストパフォーマンスの良い方法で市場調査を行うことができます。
ここでは、一口サイズの反復的かつ進化的な手法を採用して、目まぐるしく変化する状況に対応し、未知の市場領域に適応することができます。
さらに、あなたがスタートアップとして仕事をしている場合や、特に革新的な製品を開発している場合は、顧客開発に興味を持つかもしれません。この方法論では、市場調査は「最も重要なもの」であり、製品開発プロセスにしっかりと織り込まれています。
Ahrefsを例にとってみましょう。私たちは、誰でも使えるアジャイル・市場調査のハックにこだわっています。記事の後半でご紹介しますが、ソーシャルメディアでの投票、クラウドソーシング、社内での競合分析、あるいは競合他社の価格設定の追跡など、シンプル(だけど効果的!)な方法を使っています。
例えば、つい最近Twitterでマーケター仲間に、市場調査をどのように行っているか聞いてみました。市場調査には、さまざまな形や大きさがあるようです:
Have you ever performed “market research?”
What was it for?
— Tim Soulo (@timsoulo) May 3, 2021
市場調査のタイプ
誰かが特定の方法で市場調査を行っているからといって、あなたがそれを真似する必要はありません。あなたは自分のとるべき選択肢を知るべきであり、その選択肢とは、さまざまな種類の市場調査を知ることから始まります。
一次市場調査
自分で、あるいは自分の代わりに調査を行い、与えられた問題を解決するためにデータを作る必要がある場合は、それを一次市場調査と呼びます。
例: フォーカスグループ、インタビュー、アンケート(これらについては後ほど詳しく説明します)。
主なメリット:自社のブランドや製品・サービスに特化していること、データの質をコントロールできることなどがあります。
二次市場調査
他の企業や組織が作成したデータなど、すでにあるデータを利用する場合は、二次市場調査となります。
例:記事、ホワイトペーパー、レポート、業界の統計、すでに収集された社内データなど、セカンドパーティやサードパーティの情報源。
主なメリット:二次市場調査には市場の他のプレーヤーが含まれており、おそらく一次資料よりも多くのデータセットを利用しているため、市場のマクロ的な視点を得ることができます。
一次調査と二次調査の比較
一次調査と二次調査は異なるものですが、決して相反するものではありません。実際のところ、両方とも使うことをお勧めします。
一次調査では、自社のビジネスに焦点を当てたミクロな視点を得ることができますが、二次調査では、他のビジネスがどのような状況にあるのか、また、自分の調査結果がより大きなサンプルサイズの調査と比較して、どうなのかを知ることができます。
市場調査のサブタイプ
マーケティングオタクの皆さんのために、もう少し理論的な話をしましょう。プロの市場リサーチャーは、市場調査のサブタイプとして、次のような一次調査と二次調査を区別しています。
- 定性調査。インタビュー、自由形式の質問、数字やグラフではなく言葉で表現された結果などが考えられます。このタイプの調査は、根本的な理由、意見、動機を理解するために使用されます。
- 定量的な調査。調査や投票を考えてみましょう。通常はクローズドエンドの質問で、結果は数字や統計で表されます。このタイプの調査は、定義された変数(意見や行動など)を定量化し、より大きなデータサンプルから得られた結果を一般化することで、仮説や仮定を検証したり確認したりするために用いられます。
市場調査方法の概要
ここでは、自分でも、あるいは外部委託してもできる、一般的な市場調査の方法をご紹介します。
内部データ分析
すでに社内で収集したデータは、貴重な二次調査のデータソースとなります。ビジネスを続けている期間が長ければ長いほど、より多くのデータを手にすることができます。
社内データの最も良い点は、実際の市場環境で実践されていることで、それらの過去データからパターンを見つけて結論を出すだけで良いのです。
ここでは、活用できる社内データソースをご紹介します。
- ウェブサイトのデータ(Google Analyticsなど)
- CRMデータ
- 過去のキャンペーン実績データ
- 従業員へのインタビュー
インタビュー
インタビューは、直接会って話ができるので、探索的な質的調査に適しています。
構造化されていないインタビューでは、与えられた一連のトピックについて、非公式で自由な会話を行います。
構造化インタビューでは、詳細で厳密なインタビュー用プロトコルを用意し、聞きたい質問をすべてリストアップして、そこから逸脱できないようにします。
一方、半構造化インタビューでは、あらかじめ設定されたテーマや質問を中心に展開しながら、自由なディスカッションができるという「中間の道」を選ぶこともできます。
アドバイスとしては、たとえ構造化されていないインタビューであっても、常に中立性と公平性を保つことです。また、インタビューのパイロットテストを行うことで、プロトコルの不具合をすぐに発見することができます。
インタビューの録音は、回答に影響を与える可能性がありますので、賢く利用しましょう。
フォーカスグループ
フォーカスグループとは、共通の特徴を持つ5〜10人の参加者が、司会者との対話形式でディスカッションを行うものです。特定のグループが特定の問題についてどのように考えているかを知るためや、製品に対するフィードバックを提供するために使用されます。
さて、スティーブ・ジョブズがフォーカスグループを嫌っていたことはご存知でしょうか。彼はこう述べています:
フォーカスグループで製品をデザインするのは本当に難しいことです。多くの場合、人は見せられるまで自分が何を欲しているのかわからないものです。
iPhoneのような飛躍的な製品を生み出そうとしているのであれば、この言葉にも一理あるかもしれません。しかし、私たちの多くは、そこまでの野心を持っていません。ただ、提案された新機能がお客様に受け入れられるかどうかを知りたいだけなのです。そのためには、フォーカスグループが非常に有効です。
アンケート調査
アンケート調査とは、視聴者にアンケートを取ることです。アンケートは通常、顧客満足度やロイヤリティ調査のためにオンラインで実施され、最も人気があり費用対効果の高い市場調査法の一つとなっています。
オンライン調査の使用例としては、以下のようなものがあります:
- 製品機能の望ましさ
- ユーザー満足度のフィードバック
- 特定の問題発生に関する定量的な分析
- カスタマージャーニーにおけるフリクションポイントの特定
- サービスへのコンバージョン、または解約理由の発見
- 製品のオンボーディング時に顧客プロファイルを作成するため(および、マーケティングオートメーションのため)
- 最近行われた変更についての意見
市場調査の面白い例として、クラウドソーシングがあります。Ahrefsでは、どのような機能を構築すべきか、それらの機能がどれほど重要か、そしてお客様がそれらの機能に何を期待しているかを理解するために行っています。
クラウドソーシングの特徴は、あらかじめ決められた質問に答えるのではなく、ユーザーが自分のアイデアを追加したり、既存のアイデアにUpVote(肯定的な投票)やコメントができることです。あなたはビジネスを向上させ、ユーザーはより良い製品を手に入れることができ、誰もが利益を得ることができるのです。
上の画像は、Ahrefsではどのようにアイデアをクラウドソーシングしているかの例です。
ソーシャルメディアもまた、市場を調査するのに最適な場所です。
How many of you have disavowed links in GSC this year?
— Tim Soulo (@timsoulo) October 8, 2020
市場のセグメンテーション
市場のセグメンテーション(細分化)とは、ある市場を特定の基準(年齢、性別、企業規模、国など)に基づいて同質のグループに分類することです。
もし、あなたが万人向けの製品を作っていると思っているなら、考え直してください。すべての人があなたから買いたいと思うわけではありません。
賢い企業は、ターゲットを絞り、慎重に選んでいます。その企業にとって価値のある顧客となりうる人や組織のグループをピンポイントで選びます。そうすることで、理想的ではない顧客も発見し、顧客層を徐々に惹きつけていく計画を立てるのです。
P&Gがなぜ多くの競合するブランドを作っているのか、不思議に思ったことはありませんか?それは、市場のセグメンテーションです。P&Gは単純に分割して市場を征服するのです。人々はそれぞれ異なるニーズを持っているので、異なる製品(そしておそらくブランドも)を必要とします。
競合分析
市場調査のもう一つの強力な方法は、見落とされがちですが、市場環境を理解するプロセスです。真面目な話、市場で何が有効で何が有効でないかを知るために唯一できることがあるとすれば、それは競合分析をすることです。
“ある機能を作ろうと話し合うときは、必ず競合他社を調べて、どうやっているのかを確認します。”
Tim Soulo, AhrefsのCMO
競合他社について、また競合他社から学べることがどれだけあるか、そしてそれがどれだけオンラインでできるか、驚くことでしょう。この種の調査には、試行錯誤されたテクニックやハック、ツールがあり、このガイドでそれらを見つけることができます。
商業データの分析
市場の二次調査データは、比較的手頃な価格で、すぐに入手でき、簡単に利用できます。市場レポート、業界の洞察、そして誰かが既に集めて分析した大量のリサーチデータを考えてみてください。
最も評判の良いソースは、Gartner、Forrester、Pewです。それ以外にも、あなたのニッチ分野に特化した信頼できる商用データソースがあるかどうかを確認してください。
G2、Capterra、Trust Pilotなどのサイトも重要です。それらは業界の概要を知ることができるだけでなく、ユーザーのレビューや競合他社のレビューからも同様に珠玉の情報を得ることができます。Ahrefsは、Ahrefs vs Semrush vs Mozのランディングページにおけるのこのセクションのように、そのデータソースを定期的に社内外で使用しています。
市場調査のメリット – 比較
上に挙げた7種類の市場調査方法について、それぞれの主なメリットを簡単にまとめてみました。
5つの重要なステップで市場調査これらの市場調査プロセスを行う方法
ここまでで、市場調査とは何か、なぜ、いつ、行うのか、重要な種類と方法をすべて知ることができました。
では、その知識を使って、5つのステップであらゆる種類の市場調査を行う方法をご紹介しましょう。市場調査の例として、私が過去に経験した3Dプリンタの会社の話をします。
1. 市場調査の問題を特定する
すべてのリサーチプロジェクトはここから始まるのです。また、市場調査は一般的に科学的手法のパターンに従っていることがわかります。まず、自分が何を調べようとしているのかを明確にする必要があります。
自分のビジネスについて疑問に思っていることはありませんか?市場にチャンスがあるのではないか。あるいは、製品の使用に関して何か気になることがあり、それを検証したいという仮説があるのではないでしょうか?まず、市場調査プロセスの最初のステップでそれを表明してください。
一例を挙げましょう。
私は以前、いくつかの企業でマーケティングを担当していました。その中のひとつに、3Dプリンタのメーカーがありました。その会社では、初期の段階で2つの問題にぶつかりました。
1つ目は、我々の市場セグメントの1つが、同じような品質でかなり安い価格の類似製品で飽和していたことです(古典的ですよね)。2つ目は、ますます多くの3Dプリンタメーカーがホビー分野から離れ、より高価な製品でプロの分野へ進出しているように見えたのですが、当社の製品はホビー/DIYの分野に留まっていました。つまり、ホビー層には高すぎて、予算に余裕のあるお客様にはホビー向けすぎるということでした。
私が検証したかった仮説は、もし市場が3Dプリントのよりプロフェッショナルな用途に向かう傾向を示しているならば、当社もその傾向に従うべきだというものでした。つまり、ブランドのポジショニングをプロフェッショナル/プレミアム分野にシフトすることの実現性を確認したかったのです。
2. サンプルと調査方法の選択
ここまで、市場調査の主な種類と方法について説明してきました。一次市場調査と二次市場調査の違いや、定性調査と定量調査のどちらがニーズに合っているかなどについては、すでにご理解いただけたと思います。
調査対象となるサンプルとは、対象となるデータソース全体の中で、使用する部分を指します。例えば、お客様にアンケートを実施する場合、サンプルとは、アンケートの対象となるお客様の一部を指します。サンプルの選び方にはいくつかの選択肢があります。
- データソース全体を使う 明らかに、それ自体はサンプルではありません。しかし、すべてのお客様にアンケートを送ることが可能(かつ合理的)であれば、これは完全に良い選択です。
- ランダムなサンプルを選ぶ 系統的サンプリングは、ランダムなサンプルを選ぶ最も簡単な方法です。これは、xが母集団、nがサンプルである場合、x/n番目の個人をサンプルとして選択する方法です。例えば、1000人の母集団から100人のサンプルサイズを求める場合、1000/100 = 10番目の母集団を選びます。
- 非ランダムサンプリング(最も偏ったサンプリング)を使用する。※以下のリストをご確認ください。
- コンビニエンス・サンプリング:調査に参加することができ、喜んで参加する回答者を選ぶ。
- 合目的的サンプリング:代表性があると判断した回答者、または調査にとって重要なその他の特徴を持つ回答者を選ぶ。
- クォータ・サンプリング:任意の数の回答者を選びます。例えば、未払いのお客様10名、支払いを行っている小企業10名、支払いを行っている大企業10名とします。
話を例に戻します。仮説を検証するための方法として、私は次のような組み合わせを選びました。
- 一次データ:
- すべてのリセラーにアンケートを実施。市場のパラダイムシフトを実感しているかどうか、また、どのような顧客層との出会いが多いかを確認しました。また、このトレンドが長く続くかどうか、さらにプレミアムバージョンの製品に興味があるかどうかについての見解も知りたいと考えました。
- 営業チームがリセラーに電話で詳細なインタビューを行いました。ここでは、意図的なサンプリングを行いました。サンプルは、当社と最も良好な関係にある販売店で構成しました。
- 競合分析。私たちは主に、プロフェッショナル/インダストリアル分野に進出しようとしている市場のプレーヤーに関心があったので、このようなサンプルを用意しました(意図的なサンプリング)。3Dプリンタにどのような機能を搭載しているか、ブランドポジショニングはどうか、価格はどうか、ターゲット層とのコミュニケーションにどのような言語を使用しているか、などに興味を持ちました。
- 二次データ:
- Wohler社の業界レポート、Gartner社などの3Dプリンティング関連のレポート、3Dプリンティングサービスプロバイダーのレポートなど、基本的にはあらゆるデータを収集しました(コンビニエンスサンプリング)。
- 内部データ:顧客満足度の問題、およびGoogle AnalyticsとFacebookのデータに基づく一般的な現在の顧客プロファイル。
3. データの収集
問題、手法、サンプルが決まれば、あとはデータを収集するだけです。ここでは、アンケートを送付したり、インタビューを実施したり、業界のインサイトを求めたりします。
アドバイスとして、市場調査ツールの選択は慎重に行ってください。データ分析の作業量に大きく影響します。例えば、Googleフォームは、数値化できるデータを自動的にグラフ化してくれます(しかも無料)。
以下は、当時3Dプリント会社のために収集したデータです。
- 一次データ:
- リセラーの調査データ(定量的および定性的データ)。
- リセラーへのインタビューデータ(質的データ)。
- 顧客満足度の問題(すべてのカスタマーサポートチャネルを通じて収集した定性データ、約200件の問題とリクエストを分析した)。
- 競合分析データ(約10社の競合他社のデータ)。
- 二次データ:
- 3つの包括的で独立した業界レポート、他の3Dプリンティング企業が作成したいくつかの小規模なレポート、そして統計や注目すべき洞察のような数多くのデータを収集することができました。
- 集めたデータは以下の通りです。3Dプリンタメーカーの市場シェア、市場成長率、市場区分、主要な3Dプリントアプリケーション、地域別の3Dプリント導入状況、主要企業の売上高。
- また、顧客やウェブサイトの訪問者に関する人口統計学的、社会学的、心理学的データも、社内のデータから見つけ出すことができました。
4. データを分析する
データが収集できたら、次はパターンや傾向、コンセプト、よく使われる言葉などを調べます。これは、調査方法が定性か定量か(またはその両方)によって異なります。
少量のサンプルを対象とした単純な調査であれば、比較的簡単に分析でき、前述のGoogleフォームのように自動的に分析することもできます。Tableau、NVivo、PowerBI、SPSSといった高価で使いこなすのが難しいソフトウェアを使わなければならないこともあります。あるいは、PythonやRを使ってデータ分析をすることもできます(データアナリストやデータサイエンティストが在籍している場合は、運がいいですね)。
例を続けます:Googleフォームでは、定量的なデータが自動的に計算されるので、アンケートのパターンを簡単に見つけることができました。最も時間がかかったのは、すべての回答に目を通し、手作業でパターンを探すことでした(当時は、この作業を行うことができるツールを知りませんでした)。セールスとマーケティングの両チームは、複数の基準点を持つために、いくつかの定性データの分析に取り組みました。
競合他社を調査する際には、何らかのデータ構造を考え出すことで、より包括的な(そしてより健全な)作業が可能になります。私たちは競合他社のデータを、製品・サービス(価格を含む)、ターゲット市場、ベネフィット、バリュー、ブランドメッセージといった具体的なカテゴリーに分類しました。また、ブランド・ポジショニング・マップというものを使いましたが、これは次のようなものです。
二次データの分析は、おそらく最も簡単な作業でした。私たちは、質問に対する答えを探すために、その内容を吟味するだけでよかったのです。
5. 結論の解釈と発表
データを分析するだけでは十分ではありません。意思決定者のために、データをわかりやすく、実用的な方法でまとめる必要があります。報告書には、すべての情報、調査プロセスの説明、結果、結論、推奨される行動を記載するのが良い方法です。
3Dプリンタの例を要約すると、私は、市場が大きな変化を経験しており、会社はそのトレンドに従うべきだという仮説を立てました。私たちが行った調査は、その仮説を肯定的に検証するものでした。
- 当社の販売代理店には、プロ/産業用のユースケースやマシンに関する問い合わせが増えていました。ご想像のとおり、この種のお客様の予算はホビーユーザーよりもかなり高いのですが、それだけに期待も大きいのです。
- 当社の販売店では、この現象は今後も続くと考えています。さらに、より要求の高い顧客のニーズに合わせた新しい3Dプリンタに興味を示していました。
- 私たちのお客様は、初期導入者の習慣を卒業し、より簡単に使えるもの、プラグアンドプレイで確実に動作するものを求めていました。プリンタをいじることは、筋金入りのメーカーだけが興味を持つことでした。
- 私たちが興味を持った企業は、提供する商品とスマートなマーケティングコミュニケーションの両方で、すでにプロ/プレミアム市場への適応を始めていました。
- また、他にも興味深いデータがたくさんあったので、後に活用しました。例えば、エンジニアやデザイナーの他に、教育機関も興味深いセグメントであることがわかりました。
最初の市場調査は、約2カ月間にわたって行われました。また、機会があれば(あるいは必要に迫られて)この調査に立ち返り、自分たちの方向性が正しいかどうかを再確認しました。
その価値はあったのか?結論から述べると、会社に大きく貢献できました。調査の結果、これがブランドと製品のリポジショニングを行う最後のチャンスであることがわかりました。当初のターゲットセグメントは、我々が競争できない企業によって徐々に支配されていたのです。
主要なステークホルダーの賛同を得て、その結論を全社的に実施するまでには時間がかかりました(最終的には成功しましたが)。その結果、売上が増加し、顧客満足度が向上し、より収益性の高い成長軌道に乗ることができ、誰にとっても有益な結果となりました。さらには、スイートマーケットに到達するまでの時間を短縮するために、他のメーカーとの合併にまで踏み切りました。
振り返ってみると、競合他社は誰も生き残れませんでした。私たちのように適応できなかったのですから、すべては市場調査のおかげです。
プロからのアドバイス
何をするにしても、市場調査のよくある間違いを避けるようにしましょう。
- サンプリングが悪い。
- 曖昧な質問をしている
- 誘導的または負荷のかかった質問(偏見を示したり、議論の余地のある仮定を含む質問)。
- 研究目的が不明確、または多すぎる。
- 相関関係と因果関係の混在
- 競合他社の分析を無視している。
- 偏見が研究に影響を与えてしまうこと(確証バイアス https://en.wikipedia.org/wiki/Confirmation_bias は間違いなく最も一般的で最も危険なものです)。
- 定期的にデータを追跡していないこと。
オンライン市場調査ツールとリソース
市場調査の歴史は1930年代までさかのぼり、おそらく現在は20世紀の頃よりもさらに「深く」根付いています。このようなオンラインツールやリソースのおかげで、当時できたことはすべて、より良く、より早く、より安くできるようになっています。
SEOツール – Ahrefsで市場調査
Ahrefsが市場調査に役立つ3つの特徴をまとめましたが、これはAhrefsでできることのほんの一部です。
1. ブランド認知度
20世紀初頭には、市場リサーチャーを雇って、何日も、あるいは何週間もかけて「XXというブランドについてご存知ですか」と人々に尋ねなければなりませんでした。今日では、そのブランドの検索ボリュームを調べるだけでいいのです。
例えば、あなたがドローン製造ブランドを運営していて、フランスにおける競合他社のブランド認知度を調べたいとします。Ahrefsのキーワードエクスプローラーにアクセスして、ブランド名を入力し、市場として「フランス」を選択すると、あっという間に次のような結果が得られます:
ブランドキーワードのボリュームは、特定の市場におけるそのブランドのブランド認知度を示しています。また、この検索を定期的に行うことで、時間の経過とともに大きな変化があるかどうか(例えば、最近のキャンペーンによる影響など)、そのデータを把握することができます。
2. 機能面の需要
電気自動車において次のゲームチェンジャーとなる機能は、(自動操縦ではなく)バッテリー、充電時間、充電コストに関するものになるでしょう。なぜわかるのでしょうか?
私はAhrefsのキーワードエクスプローラーを開き、”electric cars(電気自動車)”と入力し、Questionsレポートで人々が何を検索しているかを調べました。これにより、電気自動車の所有者が抱えている問題(そして潜在的な所有者が心配している問題)について知ることができました。あなたの業界でも、同様の調査を簡単に行うことができます。
3. 市場の言語を理解する
ジェラルド・ザルトマンは、著書「How Customers Think」の中で、「消費者は言葉で考えている」というのが、マーケティングの大きな間違いであるという考えを提示しています。
一方、消費者が何かをGoogleで検索するとき、彼らは言葉で考えなければなりません。問題は、どの言葉かということです。
例えば、あなたがアメリカの新しい革新的な市場に参入したいと考えているとしましょう。
あなたにとって、この「アニマルフリー・デイリー(動物性成分不使用 毎日使える)」という言葉は、あなたのビジネスやマーケティング活動のまさに中心となるものかもしれません。しかし、他の人はどう思うでしょうか。キーワードエクスプローラー を使って、このフレーズで米国の Google を検索する人がどれくらいいるのか見てみましょう。
おっと!? あなたの製品カテゴリーの認知度は、残念ながら低いようですね。これは、あなたの製品は絶望的だということでしょうか?いいえ、そうとは限りません。
意味は違っても、あなたの新製品と密接に関係する別の言葉を使ってみましょう。
これで、何かが見えてきました。人々は「ヴィーガン・フリー(ヴィーガン向け ※この例では、ヴィーガン向けの乳製品代替品)」と「ラクトース・フリー乳製品」をより頻繁に検索しています。同じ単語ではありませんが、密接に関連しています。しかし、検索ボリュームの違いを見てください。
言葉は大きな違いを生みます。 Googleはそれを知っています。
あなたがこの3つのフレーズを同じグループに入れることができたのは、これらの言葉の関連性を知っていたからです。問題は、あなたのターゲット層がその関連性を知らないかもしれないということと、このような製品があることすら知らないかもしれないということです。このように検索ボリュームを簡単に分析すると、例えばコンテンツマーケティングなどで、そのつながりを作ることができるかもしれません。
検索ボリュームの大きいキーワードに関連したコンテンツを作成すれば、製品カテゴリーを示すキーワードに集中するよりも、より多くのオーガニックトラフィックを獲得できる可能性があります。 例えば、アニマル・フリー製品の主な利点は、乳糖とは関係のないもの、例えば、残酷な生産をしていないことだと思っていても、乳糖不耐症の人にアピールするためには、乳糖不耐症の問題を取り上げたいと思うかもしれません。
しかし、それだけではありません。右下の「低ラクトースチーズ」にお気づきでしょうか。これはAhrefsのキーワードエクスプローラーの「親トピック」という気の利いた機能を指しています。親トピックとは、Googleが分析対象にしているキーワードについて、より幅の広いトピックの一部として見ていることを示します。
この親トピックをクリックすると、さらに多くの検索需要を発見することができます。
米国では、「low lactose cheese(低ラクトースチーズ)」というトピックの検索が、「vegan dairy(ヴィーガン向け 毎日使える)」というトピックの検索を300%近く上回っていることがわかります。また、この親トピックを発見したことで、879の潜在的なキーワードのアイデアが得られました(その中には、「lactose free cheese(ラクトース・フリー チーズ)」のような、さらに高い検索ボリュームを持つものもあります)。
さらに多くのトピックの関連性を見つけたいですか? 問題ありません。Ahrefsのキーワードエクスプローラーの他の機能を使うことで、この調査をより深く掘り下げることができます。例えば、「Also rank for」レポートでは、ターゲットキーワードのトップ100ランキングページが、どのような他のキーワード(およびトピック)でもランキングされているかを確認することができます。
この市場調査の特徴は、キーワード調査のより広いトピックにつながります。さらに多くのキーワード候補を発見し、それらを分析する方法を学びたい場合は、キーワードリサーチガイドをお読みください。
CRM
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント・ソフトウェア)は、企業とその顧客や見込み客との間のやり取りを管理・追跡するために使用されます。通常は、セールス・オートメーションやマーケティング・オートメーションのソフトウェアと連動しています(または、それらとの統合機能があります)。適切に使用すれば、市場を見通す真の宝庫となります。
先に指摘したように、顧客の行動や特徴のパターンを発見するために活用できる一次データ源の一つです。人気があるのはHubspot、Salesforce、Intercomなどですが、CRMソフトウェアは数多くありますので、G2のようなソフトウェア比較サイトで自分のニーズに合ったものを探してみてください。
ユーザーの声を反映したツール
この種のツールを使用すると、前述の調査研究方法をオンラインで実施することができます。
Googleフォーム、SurveyMonkey、Typeform、Qualarooなどのツールを使って、ターゲットを絞ったユーザー固有のアンケートを作成し、回答を分析することができます。
通常のメールにアンケートを添付して送信するだけでなく、例えばQualarooではアンケートを表示することができます。
- デジタル製品の場合
- SaaS製品の場合
- ウェブアプリ内
- モバイルアプリ内
- ウェブサイトで
- モバイルサイト内
- プロトタイプの中
- ほとんどの公開URL。競合他社のサイトでも同様です。
もっと必要であれば、SurveyMonkey の Market Research ソリューションをご覧ください。このソリューションは、これまで説明してきたアジャイルな市場調査モデルを活用しています。顧客セグメンテーション、市場ダイナミクスのモニタリング、ブランド、クリエイティブ分析、機能の重要性、製品の適正価格の発見など、14のオンラインソリューションを用意しており、お客様がゲームを優位に進めることができます。
難しいビジネスの課題を抱えていると感じていますか?この動画で紹介している大胆な紳士は、卵の概念を破壊しようとしています。非常に困難ですが、市場調査を味方につければ可能です。
※フルスピード註:動画では、Eat Just,Incの代替卵製品「JUST Egg」の事例が取り上げられています。
ウェブサイト/アプリの分析
ウェブサイトやアプリのトラフィックを追跡することは、マーケティングの基本中の基本です。Google Analyticsが提供するいくつかのデータを見てみましょう。
- デモグラフィクス
- ロケーション(国や地域)
- 行動様式
- デバイス
- チャンネル
聞き覚えがありませんか?そう、それは古き良き時代の市場セグメンテーションに似ています。この方法は、無料ですぐに実行でき、あなたの主要なデータに基づいて行われます。
もしあなたがGoogle Analyticsや類似の分析ソフトウェア(MatomoやWoopraなど)を深く掘り下げたことがないのであれば、このマーケティングテクノロジーがあなたのために答えてくれるいくつかの質問を紹介します。
- 私のサイトに来た人は何を探しているのか?
- 購入されたお客様とそうでないお客様の違いは何か?
- 売上高の多い国はどこか?
- 最も売れている商品は何ですか?
すでにGoogle Analyticsをお使いの方は、これらのGoogle Analyticsトラッキングの間違いを犯していないかどうかを確認してください。
ユーザーエクスペリエンス調査ツール
UXデザイナーがよく使うツールですが、これらのツールの価値提案を聞いてみましょう。
- 「あなたのウェブサイト、オンラインショップ、アプリを使っている実際の人々を見て、聞いてください。」 (https://userpeek.com/ )
- リアルタイムのフィードバック。本当のお客様から。どこにいても。だからこそ、本当の結果を得るための体験を生み出すことができるのです。」https://www.usertesting.com/ )
- 「スケーラブルでカスタマイズされたユーザーリサーチ」(https://www.userlytics.com/ )
- 「ユーザーの動画と音声を記録することで、ユーザーの製品に対する正確な体験を見聞きすることができます。」 (https://www.loop11.com/ )
またしても、私たちの市場調査の方法とよく似ていますよね?これは冗談ではなく、何千もの企業がこれらのツールを使用しています。
ユーザー・エクスペリエンス・リサーチ・ツールは、製品、プロトタイプ、Webサイト、アプリに対するユーザーからのフィードバックやインサイトを得ることができます。
テストは、被検者が行うタスクに基づいて行われます。ユーザー体験調査ツールは、自社のユーザーベースを利用することも、サービスを利用してカスタムベースを定義することもできます。また、レポートやビデオも用意されているので、市場調査に組み込むことができ、市場機会を適切に利用しているかどうかを確認することができます。
広告プランニングツール
FacebookやLinkedIn、Twitterの広告プランナーを使えば、自分が興味を持っている市場セグメントの数字を把握することができます。
高等教育を受けた30代以上の男性は、テクノロジー系のガジェットに興味がある?問題ありません。ヨーロッパのC-suiteポジションにいる女性 意思決定者?それがすべてです。
国勢調査データ
この種のデータの入手可能性は、ターゲットとする市場によって異なります。例えば、米国では、Census Bureau(国勢調査局)が国内の国勢調査データを検索できる無料のリソースを提供しています。データは、トピック、年、地域、調査、産業コードなどでフィルタリングすることができます。また、事前に作成されたインタラクティブな表(ダウンロードも可能)にアクセスしたり、地図を使って国内の特定の地域を探索することもできます。
ビジネス・インテリジェンス・ツール
Tableau、Looker、Sisenseなどのビジネスインテリジェンスツールは、あらゆるデータソースに接続して、データのクリーニング、統計処理、データの可視化などを行うことができます。これらのツールは、データからインサイトを得て、ステークホルダーと効果的にコミュニケーションを図ることができるように設計されています。SQLとRを組み合わせたようなものですが、コーディングのスキルは必要なく、ユーザーフレンドリーなインターフェースを手に入れることができます。
これらのツールは機能が豊富で、価格も高いため、基本的な市場調査を必要とする小規模な企業には過剰なサービスとなってしまいます。調査方法として既に使用しているツールには、データの分析・可視化機能が付いていることが多いです。そうでない場合は、データをExcelやGoogle Docsにインポートし、Google Data Studioを使って、インタラクティブなプレゼンテーションを共有することができます。
その他の注目すべきツールやサービス
まとめと考察
市場調査は簡単なことではありません。怖いと感じているのはあなただけではありません。しかし、敬遠してはいけません。散発的な市場調査であっても、実施することでビジネスに無視できない効果をもたらします。一夜にして市場調査のプロになることはできませんが、良いニュースは、その必要がないということです。Ahrefsのようにアジャイルな方法でも、手頃なセルフサービスのオンラインツールやリソースを使ってもいいですし、リサーチを外注することもできます。有効なデータに基づいてマーケティング計画を立てれば、成功の可能性は飛躍的に高まります。
質問があれば、私のTwitterで教えてください。
Mateusz Makosiewicz – Ahrefsのマーケティングリサーチャー、教育者。Mateuszは代理店、SaaS、ハードウェア企業で10年以上のマーケティング経験があります。執筆活動以外の時間は、作曲をしたり、長い散歩を楽しんだりしています。
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