ECサイトを運営する上で、SEO対策は集客の要となる施策です。しかし、単に商品ページを作成するだけでは検索結果で上位表示することは難しく、これからECサイトを利用してくれそうな見込み顧客の心に響くこともありません。
そこで注目したいのが、「コンテンツマーケティング」という手法です。
コンテンツマーケティングは、顧客、そして見込み顧客にとって価値のある情報を提供することで、信頼関係を築き、最終的に購買へ繋げる手法です。
ECサイトのSEO対策にコンテンツマーケティングを取り入れることで、検索エンジンからの評価を高めるだけでなく、コンテンツを閲覧した読者である見込み顧客とのエンゲージメントを向上させ、売上アップに貢献できます。
ECサイトにおけるコンテンツマーケティングの重要性
まず、ECサイトにおけるコンテンツマーケティングの重要性について、確認しておきましょう。
もし、皆さんがECサイトの担当になったばかりで、SEOについて不慣れである場合は、商品ページだけがあればよいのではないか?と思われるかもしれません。
しかし、商品をコンテンツ化したり、商品ページをわかりやすくまとめたリスト型コンテンツ、トピッククラスターを意識したコンテンツページがあれば、さまざまな潜在層が検索したキーワードによる検索結果を通じて、ECサイトの存在を知らせることができます。
SEOの効果と顧客エンゲージメントの向上が期待できるから
ここからは、ECサイトでコンテンツマーケティングを行うべき理由を説明します。
コンテンツマーケティングは、SEO効果と顧客エンゲージメントの両方を向上させる効果があります。
- SEOの効果:顧客の検索意図に沿った質の高いコンテンツは、検索エンジンからの評価を高め、検索結果(SERP)での上位表示に繋がりやすくなります。
ECサイトでコンテンツマーケティングを行う場合、その商品を魅力的に紹介し、その商品が必要な人々に届けるコンテンツを提供することが重要です。 - 顧客エンゲージメント:顧客にとって有益な情報を提供することで、信頼関係を築き、ファン化を促進します。
ECサイトの中にコンテンツを公開するだけでなく、メールマガジンや会員登録への導線を設計したり、SNSアカウントのフォローを促すページ設計も行いましょう。
そうすることでECサイト内のセッションだけでなく、会員数やSNSのフォロワー数という指標からエンゲージメントを可視化することも期待できます。
購買意欲を高めるための情報提供とは
ECサイトでコンテンツマーケティングを行う場合、単に商品情報を羅列するだけでなく、顧客の購買意欲を高める情報を提供することができます。
たとえば、商品の使い方説明や活用例、専門家によるレビュー記事などは、コンテンツを見た読者に対して、自分にもできそう、買えばやりたいことができそう、という欲求を刺激し、購買判断を後押しする材料となります。
後述する「SEOに強い、ECサイト向けコンテンツの作成例」を見ながら、自分のECサイトではどのような構成が良いのかを考えてみましょう。
ブランドイメージの向上
高品質なコンテンツを発信することで、専門性や信頼性をアピールし、ブランドイメージの向上に繋げることができます。
何を持って高品質であるかはビジネスや商品によって異なりますが、to C 商品を販売するECサイトの場合、次の要素があると信頼性をアピールしやすくなるでしょう。
- 取り扱う商品に関する知識、経験年数、資格所有の明示:たとえば、その商品の業界検定1級所有者であること、アパレル業界経験10年以上、栄養士の資格所有者、など。
- 取り扱う商品のストーリー紹介:たとえば食品の場合、どのような産地であるか、どのようなプロセスで加工されているか、安心・安全の取り組みなど。
- 取り扱う商品の活用アイデア、お手入れ方法の説明:たとえばアウトドアグッズの場合、キャンプ以外での活用方法を紹介する、長くアイテムを利用するためのお手入れ方法をわかりやすく解説する、など。
ECサイトで実践すべきコンテンツマーケティング戦略
それでは、ECサイトで具体的にどのようなコンテンツマーケティング戦略を実践すべきか、具体的な方法を見ていきましょう。
1. ターゲット顧客のニーズを理解する
まず、ターゲット顧客がどのような情報を求めているのかを理解することが重要です。
- ペルソナの設定:年齢、性別、職業、趣味、価値観など、具体的な人物像を設定します。
「なぜ、その商品が欲しくなるのか」「その商品を買った人は何が解決されるのか」など、心理的な欲求を商品がどう解決するかまで踏み込むと、具体的にペルソナを設計しやすくなるでしょう。 - 検索キーワードの調査:ターゲット顧客が検索する可能性のあるキーワードを調査しましょう。
キーワード調査は無料でもある程度までは行えますが、有料ツールであれば、さらに踏み込んだ分析が可能です。
Ahrefs(エイチレフス)のように、検索意図のラベリングを自動で行うツールもあります。 - 競合分析:競合サイトのコンテンツを分析し、自社サイトとの差別化ポイントを見つけましょう。
目視による定性分析も重要ですが、ECサイトは大量の商品ページに加え、コンテンツページの評価も重要です。
自社のECサイトに足りないコンテンツ、つまり検索順位で獲得できていないキーワードを素早くチェックすることを目的とした競合分析には、Ahrefs(エイチレフス)が非常に有用です。 - 顧客の声を分析:口コミ、レビュー、SNS、問い合わせなどから、顧客のニーズや不満を把握しましょう。大量にお客様のお声がある場合は、ChatGPT や Gemini などのAIサービスを使い、要約や分類を支援してもらうこともおすすめします。
顧客の声だけでなく、潜在層の声も見つける場合は質問クエリの分析も有用です。
こちらも、Ahrefsを使うことで質問に相当するキーワードを見つけ、潜在層のお悩みに応えるコンテンツを作ることに活かすことができます。
2. 顧客の検索意図に沿ったコンテンツを作成する
ターゲット顧客のニーズを設計したら、検索意図に沿ったコンテンツを作成しましょう。
ECサイトの場合、指名検索か一般検索かを分類し、さらに一般検索のうち情報収集クエリ、購買クエリを狙うことが重要です。
コンテンツマーケティングとしては、まず情報収集クエリ(Know)を狙うことになりますが、「今年の春は、どれを買えば良い?」という購買(Buy)一歩手前の検討クエリでも、作成の余地があります。
ここでは、Know、Go、Do、Buyに分類し、ECサイトで公開できるコンテンツ案をご紹介します。
商品購入前の情報収集(Know、Infomational、Commercial)クエリ
- 商品の存在があることを知らせる、業界ニュース、トレンド情報などの新着情報。
- 商品の購入よりも手前にある、お悩み解決コンテンツ(ハウツー記事、お役立ち情報など)
- 商品の購入を決めた後で調べる、比較検討、深堀り調査のためのコンテンツ(商品比較、レビュー、ランキングなど)※これらは、Commercial クエリに該当します。
商品を購入するための移動(Go、Navigational)クエリ
- 指名検索を意識した、商品誘導型のコンテンツ(”<ブランド名> おすすめ” など)
商品を活用するための実行(Do)クエリ
- 商品購入後のイメージを説明する活用方法(使い方、メンテナンス方法、アレンジなど)
商品を購入するための購買(Buy)クエリ
コンテンツページではなく、商品購入ページの最適化が重要です。
- 商品ページの最適化(商品の購入ガイド、製品情報の網羅、お申込み方法やお支払い方法の説明、など)
3. SEOに強いコンテンツを作成する
ペルソナを細かく定め、どのようなクエリを狙ってコンテンツを作るべきを決めてまいりました。
ここから実際に、作成したコンテンツが検索エンジンで上位表示されるように、SEO対策を徹底しましょう。なお、ここで説明している内容はページ単位で調節をする、オンページSEOの簡単なチェックポイントです。
- コンテンツページごとのキーワード選定:そのコンテンツのターゲット顧客は誰か?そのページに対するテーマキーワードは何か?これらを設定し、コンテンツに含めてください。
- タイトル・見出しの最適化:検索キーワードを含めることはもちろん、クリック率を高めるタイトル・見出しを設定します。
一度公開した後で、もう一度タイトルや見出しを最適化することも検討してください。リライトに使えるリソースが限られているときは、タイトル・見出しだけを修正し、いったんGoogle Search Consoleでのクリック数を確認するといった、ミニマムな手段を実践することもお勧めです。 - メタ ディスクリプションの最適化:メタ ディスクリプション(meta description)とは、ページの概要を説明する meta タグのことです。Google などの検索エンジンにて、検索結果に表示される説明文を最適化することで、クリック率を高めることが期待できます。
検索エンジンにも人間の検索者に対しても、そのページはどんな内容なのかを知らせるタグとなります。コンテンツの中身をしっかり作った後は、メタディスクリプションでもわかりやすく説明しましょう。 - 内部リンク・外部リンクの最適化:関連性の高いページへのリンクを設定し、ページの評価を高めるだけでなく、サイト全体の評価を高めることも意識しましょう。
内部リンクの最適化としては、定性面では関連性のあるコンテンツを、定量面ではアクセスを上げたい関連記事を選定しましょう。
外部リンクの最適化については、サブドメインではなく別ドメインの扱いとなっている関連サイトにリンクを張ること、コンテンツ掲載として第三者のサイトにリンクを伴う掲載を依頼することが挙げられます。
SEOに強い、ECサイト向けコンテンツの作成例
ここで、実際にコンテンツ例をご紹介します。コンテンツ作成のSOP(標準作業手順書)としてまとめることで、品質を損なわず効率的な公開を維持することができます。
コンテンツ作成のテーマとして、今回は以下を設定しました。
- ECサイトの業種:ファッション
- ターゲット顧客:女性、40代。
- ターゲット顧客のお悩み:春物のアウターで、何を着れば良いのかわからない。
- ターゲット顧客が解決したいこと:
どんな春物のアウターが自分に合うのかを知りたい。
春物のアウターを、予算内で新調し、おしゃれがしたい。
着回しもできるようなアウターが欲しい。 - ターゲット顧客の感情:購入前の情報収集がしたい。
コンテンツページの注力キーワード例:春 アウター 何着る
Ahrefsのキーワードエクスプローラーで調べると、このような検索ボリュームが表示されます。
1キーワードごとの検索ボリュームは控えめなスモールキーワードですが、キーワード難易度は0であり、親トピックも狙えばロングテールで月100セッション以上は狙えそうです。
※注:あくまでもコンテンツ作成の例であるため、実際にはミドルキーワードや、さらにビッグキーワードを狙うことも検討の余地があります。

コンテンツページのタイトル例:【2025年版】この春何着る?40代女性向けアウター5選・着回しアイデアも紹介!
記事構成:次のような構成を意識しましょう。
- 現在の上位ページ構成を意識する:注力しているキーワードに求められるトピックを満たしている、上位ページを観察しましょう。トピッククラスターを意識しながら、人間である読み手に伝わる見出し構成を狙ってください。
- 上位ページにないオリジナリティを組み込む:上位ページがお勧めしている春物アウターの種類や傾向だけが、ご自身のECサイトでお勧めできるものでしょうか? 自社ECサイト独自の有益な商品があれば、ぜひ紹介しましょう。
- ショッピングページに繋がる内部リンクを組み込む:コンテンツページだけで、導線が完結していませんか?「<ECサイト名>で購入」などのリンクボタンを入れ、商品の購入に繋がる導線を設定しましょう。
- 関連記事を設置する:商品の購入に向けた導線はもちろん、ほかのコンテンツも読むことで読者の満足度を高めるように工夫しましょう。
春物のアウターだけでなく、お出かけに使えるバッグやオフィス勤務に便利なシューズなど、ほかにも買いたいものを想起し、商品購入ページに移動してもらえるような回遊性を意識しましょう。 - 公開したコンテンツは、Google Search Consoleで送信する:現在のGoogle は自動的にコンテンツをクローリング、インデックスしてもらえますが積極的なインデックス送信も推奨されます。特に、一度公開したページをリライトした後はURL の再クロールを Google にリクエストすることで、検索エンジンのインデックスが期待できます。
参考:Google 検索セントラル|URL 検査ツールを使用する(URL が少ない場合)
※外部サイトに移動します。 - SNSにも公開する(可能な限り):ECサイトのSNSアカウントがあるならば、コンテンツを公開しましょう。SNSの運用担当者がいる場合、ぜひコンテンツ再利用のために連携し、情報発信をしましょう。
ここまでが、コンテンツ作成~公開フローの例となります。
コンテンツの効果測定と改善
コンテンツマーケティングは、効果測定と改善を繰り返すことで、より高い成果を得ることができます。
以下の全てを行うことができればベストですが、まずはできることから習慣化し、ルーチンを確立できたら次の効果測定も組み込む、というステップを計画しておくと、やるべきことの多さに圧倒されにくくなります。
- アクセス解析:Googleアナリティクス(GA4)などの解析ツールを活用し、PV数、流入キーワード、滞在時間などを分析しましょう。
ECサイトの規模が小さく、シンプルなアクセス解析が望ましい場合はAhrefs Web アナリティクスもお勧めです。こちらは無料で利用できます。
参考:Ahrefs ウェブ分析について
※Ahrefs 公式サイトのヘルプに移動します。 - コンバージョン率の測定:コンテンツ経由の売上や問い合わせ数を測定します。ウェブサイトの制作担当にコンテンツページの GA4 イベント設定をお願いし、コンバージョン率の測定を依頼しましょう。
- 顧客アンケート:コンテンツの満足度や改善点を、顧客に直接尋ねることも可能です。ウェブサイトの制作担当に、Yes/Noや10段階評価で読者の満足度を送信できる機能を組み込めるか、そしてGA4でイベント送信可能な仕組みを実装できるか、相談してみましょう。
- A/Bテスト: タイトルや見出し、画像などを変更し、効果の高いパターンを検証します。ECサイトの場合、コンテンツページよりも商品ページでのA/Bテストが現実的です。
しかし、重要なコンテンツページである場合は、A/Bテストを計画することも検討の余地があります。
ECサイトのコンテンツ制作は、やることが多すぎる?
この記事を作成した株式会社フルスピードは、Ahrefs(エイチレフス)のオフィシャルパートナーとして、Ahrefsを活用した効率的なコンテンツSEOサービスを提供しております。
「ここまでの流れは理解できたけれど、まったくリソースが足りない。」
「コンテンツ作成の手順書を書いても、その通りにやれるスタッフがいない。」
「Ahrefsを使っているが、なかなか成果に繋がるキーワード選定ができていない。」
一度、株式会社フルスピードにお悩みを相談(無料)してみませんか?
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まとめ
ECサイトのSEO対策にはコンテンツマーケティングを取り入れることで、検索流入も期待できるようになり、潜在層とエンゲージメントを築くことで商品の購買行動につなげることを目指しやすくなります。
ぜひ、自社ECサイトに最適なコンテンツマーケティング戦略を立案し、実践してみてください。